佐吉コレクション 三味線三昧
写真と文/七代目杵屋佐吉
江戸時代の名工・四代目石村源佐衛門忠政 作
年 代:1657〜1708年頃
作 者:四代目石村近江源佐衛門忠政
棹 :七ッ継ぎ 枇杷(びわ)材
胴 :桑材(高蒔絵) 内綾杉
平成9年、東京都公認伝統工芸士・芝崎勇二(亀屋邦楽器)により修復・復元
[特徴および所見]
胴が薄く華奢なため、今の三味線のように皮を強く張ることができない。
また、蒔絵を傷つけないように皮を張る特別な技術が必要。
この時代の三味線にはサワリの機能がないが、素朴で大らかな音色である。
棹は細く、駒の糸道も狭くなるので、演奏には独特の技術を要する。
糸巻は細く短く、乳袋に継ぎ手があるので演奏中の転調には無理がある。
駒は、当時は竹、水牛、黄楊(つげ)等を使用していたと思われる。
撥は、京撥のような開きのない細いものを使っていたと思われる。
「野路」は四世佐吉の時代より佐吉家にあったものだが、私はこれを楽器として演奏することが可能であろうかと常々考えていた。
ある時、親しくなった豪徳寺の三絃司「亀屋」の親方に相談したところ、「やってみましょう」と言って下さり、平成9年、1年半かけて遂に念願の―楽器としての野路―が完成した。
その記念として「野路の月」を作曲。平成10年6月、国立小劇場に於いて第四回「杵屋佐吉の会」〜三百年の時を超えてめぐり会う三大名器〜を開催、寶山左衛門氏の能管「大雷神」、萩岡松韻氏の箏「松風」と共演した。
「野路の月」
木村梢 作詞/七代目杵屋佐吉 作曲
能管手附 寶山左衛門/箏手附 萩岡松韻
祭ばやしもいつか絶え
むさし野に
月上り初む
芒ヶ原は黄金に揺れつつ
秋の露の美酒を受く
(合)
深みゆく秋
月天心にあり
過ぎし日を思い
去りにし人を偲ぶ
(合)
虫すだく今宵
共に歌い
盃交わさん
250年以上前の三味線には
サワリがない。
糸巻は金漆の塗飾。
長年の使用で色が落ちているが、
オリジナルが残っているのは
すばらしい
萩と鈴虫の高蒔絵
丸穴には銀の座金があり、
楔(くさび)を入れて
「ハ」の調整ができる
柊の駒
浮世絵のような
細身のフォルム
箱から出したところ。
パーツは細かい
箱書
同じ文様の駒入れ
七ッ継ぎなので
中継ぎもたくさんある