杵屋佐吉オフィシャルウェブサイト

佐吉コレクション 三味線三昧
写真と文/七代目杵屋佐吉

帰ってきたお化け三味線


昭和12年頃 伊藤鉄之助作(推定)


この三味線も作り方や材質、また四世佐吉の見立てであることも含め、「白龍」と同じグレードであり同じ作者に間違いないと思う。現代では手に入らない貴重で贅沢な材料で作られている。

なぜ「おばけ三味線」か。
私の母方の祖母は四世の門弟、佐々珠といって四世の見立てたこの三味線を我が子のように大切にし、戦時中も肌身離さず持っていたそうである。没後は私の母が使っていたが、その後私の姉と共に嫁いで行く。あまり三味線を弾かなかった姉は、どうしても欲しいという方に譲ってしまったのだが、その人が三味線を弾くと必ず「縞の着物を着た女の人が現れる、何かいわくがあるのでは。」と言って返してきた。父五世佐吉の稽古場に落ち着いたものの、他人が触ると「パシッ!」と火花が出ることが幾度かあった。 

父の没後は私のところへ来たので、祖母に逢えるかと思い、暗い部屋に一人で籠り何度も弾いてみたのだが、とうとう縞の着物の人は現れてくれなかった。少し残念だったが、きっと安心してくれたのだろうと思っている。とてもやさしい音色だが大音がするので、時々舞台で使っていることも喜んでくれているだろうか。楽器は生き物だとつくづく思う。  




 白龍と同等のグレードで、
 同年代・同作者と思われる。
 痛快な江戸前の細棹







 現佐吉の母方の祖母、阪東愛子と
 その夫・阪東寿三郎(豊田屋)














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